【建設通信新聞
2011年 6月 28日 記事掲載
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国土交通省の大森雅夫建設流通政策審議官は、建設産業戦略会議(座長・大森文彦弁護士・東洋大法学部教授)が「建設産業の再生と発展のための方策2011」をまとめたことを受けて日刊建設通信新聞社などとのインタビューに応じ、「これからは行政、業界、企業、団体の行動が大切になる」と、具体化に向けて動き出す考えを示した。地域維持型契約や保険未加入対策、技術者制度、入札契約改善などに取り組む。
大森建流審は、「再生と発展のための方策2011」について「ベースにあるのは、『建設産業政策2007』で、当面まず具体的に何をしなければならないかを整理した。これからの建設産業の第一歩となると思う」と、提言の位置付けを示した。
提言のポイントとしては、「除雪を対応できる企業が少なくなるなど地方企業の疲弊がさまざまな現象として表れている。地域コミュニティーを守るためには、(建設会社が)やらなければならないことがある」と、地域維持型契約方式を挙げた。さらに、技能労働者の保険未加入問題については、「保険加入は事業者負担が大きい。片方は入らず、片方は入っていてということでは競争にならない。同じ条件で競争しようということだ。専門工事業だけでなく、ゼネコンも前向きな雰囲気になっている。若年入職者減少を始め、いかに技能を継承するか、日本の建設業の根幹にかかわることだ」と取り組みの重要性を語った。ただ、「すぐに来年、再来年からではなく、目標に向かって紆余曲折があるだろう」とじっくりと進める考えだ。
入札契約制度については、ダンピング(過度な安値受注)に対する問題意識を改めて示し、「国交省直轄工事はある程度、落ち着いたが、今後は地方自治体に対して総務省とともに取り組みたい」とし、入札契約適正化指針改正を進める考えだ。
新たに盛り込んだ「段階選抜方式」の導入については、「WTO(世界貿易機関)案件の1件当たりの競争参加者数が18.4者と多く、予定価格の7.1%が入札にかかるコストだ。適正な競争をすべきだが、社会的コスト削減という意味で少し改善の余地があるのではないか。受発注コストの削減は、企業にとっても経営コストの削減につながるだろう」と導入の考え方を説明。「簡易な技術審査をいかにするかが、大きなポイントになる」とした。
技術者制度については、「建設会社の最大の商品は技術者だろう。これまで監理技術者証だけだったが、技術者の工事経験、資格、講習経歴などが分かると、消費者にとって(技術者の意味合いが)全然、異なってくる」とデータベース構築の効果に期待した。監理技術者証については、建設業法の改正が必要になるため、「次の通常国会を目指して議論を積み重ねる」とした。提言では、業種区分の点検・見直しも示している。「28業種は40年間変わっていない。さまざまな要請を受けており、どう対応を取るか、決めなければならない」とし、今後は「法律体系を変えるのか、議論が必要だ」とした。
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