【建設工業新聞
2011年 7月 1日 記事掲載
】
国土交通省の有識者会議「建設技能労働者の人材確保のあり方検討会」(座長・蟹澤宏剛芝浦工大教授)は6月30日の会合で提言案をまとめた。社会保険未加入企業について、排除方策の全体像を示した上で1年程度の周知期間を設け、行政、元請・下請企業が一体となって監督・指導を強化。実施から5年後をめどに、加入義務のある建設業許可業者で加入率100%を目指すとした。同検討会は7月下旬に開く会合で最終提言をまとめる。
提言案は、労働環境の改善に向けて保険加入企業の排除や重層下請構造の是正などが必要だと指摘。保険未加入企業の排除については、行政と元請・下請企業がそれぞれ保険加入の取り組みを強化するよう求めた。具体策として建設産業行政の担当部局が社会保険担当部局と連携。建設業許可更新時、公共事業労務調査時、経営事項審査時、立ち入り審査時など保険加入状況の指導監督を行うべきだとした。元請企業は、施工体制台帳や作業員名簿などによって下請や建設現場の各労働者の保険加入状況をチェック・指導する一方、下請企業は再下請通知書を活用して請負関係にある者の保険加入状況をチェックするよう求めた。
重層下請構造の是正に関しては、個々の企業の経済的合理性などから下請契約を行っていると、その必要性を認めた上で、行政による一律の次数制限という規制手法ではなく、企業の自主的な取り組みによる是正が望ましいと指摘。技術者データーベースや施工体制台帳に基づく一括下請負の確認強化、主任技術者の配置徹底、請負・派遣の判断基準の周知徹底などを通じて請負と雇用関係の適正化に取り組む必要性を示した。
中核的な建設技能労働者の確保策と育成・評価・活用策については、専門工事業団体で入職後の経験年数に応じた職位、年収などを記載したキャリアパスを作成・提示するよう提案した。育成・評価・活用策としては、建設現場が減少していることなどを勘案。現場で技能を体得するOJTを補完する観点から、資格取得時に外部施設で研修するOFF−JTの充実が必要だと指摘し、OFF−JT費用の業界全体での負担システムやOFF−JTカリキュラムの開発支援などに取り組むよう求めた。
|