【建設通信新聞
2011年 7月 8日 記事掲載
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高速道路会社の発注工事で、低価格入札の増加に歯止めが掛からない。日刊建設通信新聞社が東日本、中日本、西日本、首都、阪神の高速道路5社における2010年度の低入札発生状況を調査したところ、契約件数に対する低入札の発生率は全体で5割を超えた。低入札は09年度に急増したが、10年度はさらに拡大し、5社すべてで増加傾向が続いている。特に大型工事での発生が著しく、東、中、西日本3社のWTO(世界貿易機関)案件は計47件すべてが低入札で、発生率は100%となった。
10年度の低入札総数は519件。全体の発生割合は前年度より6.5ポイント増え、50.8%と半数を上回った。工事件数の多い東、中、西日本3社はいずれも50%超となっている。
WTOに限ると発生率はさらに高まり、全体では80%超に達した。首都高速はゼロとなっているが、これは大型案件に「技術提案価格交渉方式」を適用し、低入札調査基準価格を設定していないためだ。100億円や200億円を超えるような大規模工事でも、予定価格の半分以下で落札するケースなどがあり、実質的には低入札に該当しそうな案件も少なくない。
同社の10年度工事落札率は、前年度から5.1ポイント下がり81.0%だった。特に土木は前年度より17.1ポイント低い67.3%、鋼橋は18.5ポイント低い74.1%、機械器具は19.1ポイント低い72.3%と、比較的契約金額の大きい工種で、大幅な落札率の低下がみられている。
工種別の状況をみると、電気・通信・情報関連や舗装で低入札が頻発。土木や建築、道路補修・保全も多く、鋼橋や塗装、PCなどが続く。
低入札の増加要因には、経済状況や公共事業の大幅削減による過当競争などが考えられている。各社では施工体制確認型の導入や失格基準の設定、監理技術者の増員など、さまざまな対策を講じて品質確保に努めており、現時点では大きな問題は起きていないとの見解で一致している。
ただ、「発注者側の検査・品質管理の頻度増加や追加工事、新単価などの協議難航」(中日本高速)や「調査に長期間を要し、発注者・受注者双方に不利益が生じている場合がある」(西日本高速)などの声も上がる。設計変更が生じた際は、「低い落札率を考慮するため、契約変更手続きへの影響も考えられる」(阪神高速)という。
11年度に入ってからの動きでは、中日本高速が総合評価落札方式における価格評価点の算出式を4月に改訂。従来は「入札率75%以上」の最低入札者を満点としていたが、「低入札調査基準価格(約85%)以上」に改めた。低入札の場合は価格評価点をより低く評価し、入札率が50%未満になると加点しない。
西日本高速も7月から、低入札調査の基準となる適正契約基準価格を廃止し、従来の最低制限価格相当額を2%程度引き上げた「審査対象基準額」を新たに設定した。基準を引き下げることで、調査業務の負担軽減を図る。
さらに、総合評価落札方式の評価方法を抜本改正し、価格評価点を導入、計算方法も除算方式から加算方式に変えた。低入札価格帯において、価格差よりも技術評価差を優位に評価する仕組みを構築した。基準額を下回ると、価格評価点はゼロとなる。
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