【建設工業新聞
2011年 7月 28日 記事掲載
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国土交通省の有識者会議「建設技能労働者の人材確保のあり方検討会」(座長・蟹澤宏剛芝浦工大教授)は27日、最終提言をまとめた。長期・安定的に人材育成を行う企業が競争で不利にならないような環境を確保する必要があると指摘。企業と行政が一体となって保険未加入企業の排除策などを実施するよう求めた。将来の中核技能者の育成・確保の観点からキャリアパスの作成や工事量減少を勘案したOJTからOFF−JT重視への教育訓練の移行も提案した。
提言では、建設投資の減少で労働環境が悪化し、収入の低さや福利厚生の未整備などを理由に、将来の建設業を支える若手技能者の入職離れが懸念されると指摘。労働環境対策と人材確保・育成策が不可欠だと訴えた。労働環境対策の柱は、保険未加入企業の排除と重層下請構造の是正。保険未加入企業への対策では、行政が建設業許可更新時や経営事項審査時などに保険加入状況の確認を強化。元請企業は施工体制台帳などを使った下請企業の保険加入状況のチェック(建設業法で規定する特定建設業者の下請負人指導努力義務の中で保険加入を明示)、下請企業も専門工事業団体によるITを活用した保険加入状況の効率的なチェックなどを行うよう求めた。こうした対策の実施から5年後をめどに、加入義務のある建設業許可業者については加入率100%を目指すとした。
重層下請構造の是正に向けては、行政による一律の次数制限という規制手法は取らず、契約当事者の建設業者が施工力のある下請企業の選定などを推進するよう提案。技術者データベースや施工体制台帳に基づく一括下請負の確認強化など建設業の請負と雇用のルールを徹底することも求めた。
人材確保・育成策では、若手の入職促進のために各専門工事業団体が入職後の経験年数に応じた職位、責任、年収などを明示したキャリアパスの作成に取り組むよう提案。技能を磨く現場が減少しているため、外部研修施設で研修するOFF−JT重視の教育訓練に移行し、その費用を業界全体で負担する仕組みの検討も課題に挙げた。
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