北上事務所 ニュース |
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元・下紛争が増加傾向/中紛審・全体では60件超の勢い/下請かけこみ寺
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【建設通信新聞 2012年 8月 23日 記事掲載 】
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国土交通省の中央建設工事紛争審査会(中紛審)への紛争申請が増加している。経済産業省中小企業庁が設置している「下請かけこみ寺」にも建設業関係の相談が前年度より増加している。建設工事量の増加が紛争件数の増加の主要因とみられるものの、元請けが各方面から厳しい視線にさらされているとも言えそうだ。
中紛審は、建設工事の請負契約についての紛争を解決するために建設業法に基づいて設置している裁判外紛争解決手続(ADR)機関。2012年度第1四半期(4?6月)の総申請件数は15件だった。前年同期と比べると約7割増で、四半期別で見ると、11年度第3四半期(10?12月)から3期連続で10件を超える申請となっている。このペースで推移すれば、12年度の総申請件数が60件程度となり、前年度の41件を大きく上回る勢いだ。
当事者類型別では、12年度第1四半期は下請けから元請け(申請者が2次下請けの場合は1次下請け)への紛争が6件で最も多く、法人発注者から元請けへの紛争も増加傾向だ。紛争理由では、「下請代金の争い」が10年度第3四半期は2件、同第4四半期(1?3月)が3件だったのに対し、11年度に入ると第1四半期が6件、第2四半期(7?9月)が3件、第3四半期が4件と増加傾向を示し、12年度第1四半期は5件となった。工事瑕疵(かし)も11年度第3四半期が2件、第3四半期が4件、12年度第1四半期が5件と増えている。
中企庁の「下請けかけこみ寺」は、中小企業の取引上の悩み相談への対応やADRによる解決を図る機関。09年度(1466件)以降、建設業関係の相談件数は減少傾向で、10年度が1257件、11年度が1021件だった。ただ、12年度に入り、4月単月の取り扱い件数が104件で前年同月比4%増、5月が60.2%増の133件、6月が23.5%増の100件と3桁台の相談が続いている。
これら紛争機関への申請・相談は、工事件数が増えれば、必然的に増加する傾向にあるため、東日本大震災の被災地における復旧・復興工事の増加などの影響で紛争も増加しているとみられる。また、一定の工事量が確保され、下請けが紛争を公的機関に持ち込みやすい環境になっているとの指摘もある。いずれにしても、工事の増加に伴って元請けの紛争リスクも高まっている。
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