【前ページに戻る】  
全文検索 AND OR

 

北上事務所  ニュース 

 

2013年、混沌から明るさへ/建設産業界の展望
【新政権の政策効果に期待】

【建設通信新聞  2013年  1月  7日 記事掲載 】

 

  3年3カ月ぶりに政権が変わった2012年。年末の組閣ということもあり、新政権の政策効果が表れるのは13年からとなる。第2次安倍内閣が打ち出す経済再生策に期待しているのは、何も建設産業界だけではない。円安、株価の上昇といった「アベノミクス」効果が早くも表れ、多くの産業人にとっては、先行きの不安感が少しはぬぐえたのではないか。ひるがえって建設産業界では、労働者や資材不足に伴う経費の増加が経営を圧迫しており、その対策が緊急の課題として浮上している。社会保険未加入対策も、ことしはより具体的な動きが出てくる。大型補正予算の編成が、国内景気の減速に歯止めをかけるだけの効果を持つとの期待も寄せられているが、その一方で、公共事業の執行能力に対する不安もある。また、昨年の中央自動車道笹子トンネル天井板崩落事故に端を発した社会インフラの老朽化も、大きな問題として、早急な対応が求められている。南海トラフ地震への対応も急がれる。国を挙げて、強く、しなやかなレジリエントな国土づくりを始めなければならない年でもある。建設産業界の「2013年」を展望する。


◆防災・減災 老朽化対策/国土交通省
  13年の国土交通省の施策は、新政権が打ち出す12年度補正予算案と13年度当初予算案で方向付けられる。12月26日に就任した太田昭宏国交相は公共事業について「多くの人たちが納得できる公共事業としては、防災・減災、老朽化対策があり、その積み上げが大事」と語り、災害対策を念頭に置いて事業を進めることを強調している。ただ、補正予算で公共工事の発注が増えても、発注の処理や技術者の配置など、受発注者双方ともに負担が増大するという懸念がある。補正予算と13年度当初予算の事業量を平準化し、安定的な工事発注を確保した形の予算編成を望む声も業界から上がっている。こうした要望にどう対応するかも焦点となる。


  低入札価格調査基準価格と予定価格の水準に関する議論も本格化する。調査基準価格の算定に当たっては、企業の施工力や人材確保への配慮などを踏まえた、新たな要素を盛り込むことができるかを探る。予定価格のあり方については、その算定基準となっている取引の実勢価格が、ダンピング(過度な安値受注)などにより正常な市場取引を反映したと言えない面があるとしており、実態をとらえた予定価格を設定できる方策を検討していく。


  社会保険未加入対策も13年度から本格化する。昨年11月から始まった建設業法に基づく立入検査も、12年度は現場への周知や問題点整理に充てる方針の地方整備局があり、今年度の結果を検証した上で検査体制を固める。


  また、事業者の加入促進に向けた取り組みにも注力。優良事業者認証制度の構築に向け、導入によるインセンティブや事業者を評価する際の項目の設定などを年度末にかけて進め、13年度からの実施を目指す。

◆点から線、面へ広がる/建築設計界
  まちづくり、建築の専門家である建築士・建築家が東日本大震災の復興計画や今後発生が予想される大地震に対する事前復興計画などにかかわり、貢献する場面が少なかった。この状況を打破することが大きな課題の一つだ。それができれば、建築士・建築家が社会・地域の中で認められ信頼されることになる。


  そのためにも、与えられた敷地に閉じこもるのではなく地域の中に入って行き、顔が見える存在として活動することが求められる。同時に、専門性を発揮できる公的な仕組みの構築も不可欠だろう。また、社会、地域の中での認知、信頼の向上は、設計監理フィーの向上につながるはずだ。


  だからこそ、建築界全体が協働・連帯に本腰を入れることが求められる。


  建築設計事務所の業務は、国内、海外ともに転換期を迎える。国内はこれまでも業務量が多かった病院、学校に加え、地方自治体の庁舎を始め安全性を確保する必要がある公共施設の発注量が増えている。このうち、築後50年前後の施設は耐震改修にとどまらず、建て替えを選択するケースが多い。


  一方、長く有効に建築を使い続けるという意識が発注者に浸透したことで、設計だけでなく、マネジメントを含めた川上・川下のニーズも高まっている。設計業務という“点”から、プロジェクトのライフサイクルを考える“線”へ業務領域拡大が大きな流れになりそうだ。


  海外は、アジア各国で日本事務所の技術力、品質を提供してきた。中国、ベトナムなど一部の注目市場に限定されず、ミャンマーなど新たな市場で掘り起こしが進むとみられる。

◆予算の安定化に期待/建設業界
  東日本大震災の復旧事業という内需による景気の下支え効果が1年足らずで陰りを見せ、国内景気が減速感を見せ始めた矢先の政権交代によって、大型補正予算が編成され、本格的な景気の減速が避けられると予想されている。こうした状況下で建設業界は、新政権に内需主導型の経済運営の推進を期待している。


  ただ、現在の労働者・資材不足などの中で受発注者双方に「執行力」の不安感もあり、工事発注の平準化を求める声も出ている。また、地域建設業も含め、建設業界全体が、大型補正予算を歓迎しつつ、あわせて公共事業の安定化に対する期待度も上がっている。近年、多発する自然災害や中央自動車道笹子トンネルの天井板崩落事故など、防災・減災対策や老朽インフラの維持管理・更新を実現するためには、計画的な社会資本整備が欠かせない要素になるとの考えからだ。


  その意味で、建設業界は、2−3月にも編成される13年度の当初予算案への注目度が高い。毎年夏に、国債発行44兆円という財政の大枠を決めていた「中期財政フレーム」も、減り続けてきた公共事業費の今後の行方を決定付けるものとして注目が集まりそうだ。


  仮に、経済状況が好転し予算が安定化したとしても、建設業の激しい価格競争による低利益の構造は変わらず、若年層の人材不足・技術継承途絶という構造的な最重要課題が解消するわけではない。社会保険未加入対策や入札契約制度改革など、進み始めている施策の進捗に目を向け続ける1年になりそうだ。

◆ポスト復興の準備期間/コンサル業界
  東日本大震災の復興需要と全国防災対策が追い風となって、建設コンサルタント各社は受注の好調が続いている。さらに、自民、公明両党の連立政権は、12年度に大型補正予算も予定しているため、震災前に受注減で苦しんだ経営環境が一変する様相を呈している。


  しかし、少子高齢化や人口減少、財政再建といった公共投資の削減要因となる根本的な問題は、何一つ解決したわけではない。復興需要が終われば、再び逆風に変わることが容易に推測できる。冬の時代への猶予期間ともいえるこの数年の間に、どのような手を打つのか、残された時間は少ない。


  12年はM&A(企業の合併・買収)や他社との提携、子会社の設立などの動きが、前年と比べて少なかった。震災対応に追われて忙しかったという背景もあるだろうが、受注が好転したことで安堵して取り組みのスピードが落ちたのであれば、公共市場の減少に合わせ再び縮小均衡しなければいけなくなる。建設コンサルはかつて、調査・設計業務がメーンだったが、いまでは公共発注者の人材不足も加わわり、建設にかかわることすべてにフィールドが広がっている。発注を待つのではなく、発注者が抱えている課題に対し、解決策や対応策を提案することもできる。


  ポスト復興に向け、いまの時期を貴重な準備期間と位置付け、フルに活用する必要がある。海外事業の強化、民間分野の開拓、公共市場の領域拡大など、自社の特性を生かしたさまざま取り組みが求められる。

◆健全な発展へ課題解決/設備工事業界
  省エネルギー対策の強化や再生可能エネルギーの活用、そして中長期的課題である低炭素社会の実現に向けて、建築設備が果たす役割はますます大きくなるが、克服すべき課題も根深い。かねてからの「分離発注の推進」「適正価格、適正工期での受注確保」「人材の確保と育成」はその最たるものだ。


  人材の継続的な確保と優れた技術や技能を的確に継承していくため、若者に夢と生きがいを持って活躍できるよう絵姿を示すことももちろんだが、就労環境の改善も決して無縁ではない。


  また、厳しい経営環境の中で適正な利益を確保しつつ、品質の高い建築設備を供給し続けるためには、適正な価格・工期での受注を確保し、健全で公正な競争市場の構築を進めることが自ら、さらに言えば元請け、建設産業全体に欠かせないことを強く訴えるべきだ。適正な利益なくして、社会貢献どころか、人材や企業の将来を支える投資すらままならない。


  そして、顧客との直接対話を通じ、品質確保、技術革新への対応やライフサイクルコストの低減に的確に対応でき、品質とコストの関係が透明で明確な分離発注方式の採用を訴え続けなければならない。


  いずれも業界全体の課題であると同時に、密接にかかわり合い、解決にはそれぞれの企業の取り組みも欠かせない。


  社会保険の加入促進や登録基幹技能者の処遇改善一つ取っても、時代や社会、そして未来からの要請であり、大きなチャンスでもある。


  「All roads lead to Rome」−−。すべての課題解決は業界の健全な発展に通じる。

◆元請けとの協調が焦点/専門工事業界
  専門工事業界にとって最大の関心は、「社会保険未加入対策」の具体的な行方であることは間違いない。国土交通省、厚生労働省が連携し、昨年11月からスタートした保険未加入対策の取り組みが全国各地で本格的に始まるのがその理由だ。


  ただ専門工事業界にとって大きな懸念があるのも事実。その一つが、企業経営の急速な悪化に伴う専門工事業界からの行政に対する要望が、場合によっては、「元請けと下請けの対立の構図」ととらえられることへの強い懸念だ。


  ある専門工事業団体の幹部は、「元請けと下請けを含め建設業界最大の課題は、ダンピング問題。われわれがこれまで主張してきたことはこの一点に尽きる」と説明。その上で、「われわれの主張の真意を元請けにも気づいてほしい」と訴える。


  社会保険未加入対策では今後、国交省が示すより詳細な一人親方の判断基準と、元下契約で社会保険加入費用が確保できる枠組みが構築できるかが大きな焦点になりそうだ。


  一方、13年は専門工事業界にとって、登録基幹技能者制度の行方も大きな関心事となりそうだ。国交省が創設した登録基幹技能者制度だが、ことし更新時期を迎える中、国交省の発注行政で同制度を活用した評価は、専門工事業界が期待したほど進んでいないことが背景にある。


  また、技能労働者の確保、いわゆる人材確保でも、「職人の魅力は昔から高い収入。それがいまは屋外作業の上に低収入で人が集まらない」状況が続いている。そのため元請けと連携した魅力ある産業構築が最大の課題となりそうだ。

 
 
 
建設通信新聞の購読申し込みは、こちら
 

戻 る


【北上グループ 行政書士北上事務所 法令労務協会 株式会社ピーケーアイコンサルティング】
兵庫県宝塚市安倉北3丁目5番18号 TEL:0797-84-1340
サイトマップ プライバシーポリシー

営業エリア: 宝塚市、川西市、猪名川町、伊丹市、尼崎市、西宮市、芦屋市、三田市、池田市、神戸市、大阪市、京都市 他
Copyright Kitagami Gyoseishoshi Lawyer's Office. All Rights Reserved.