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技能労働者への賃金支払不履行/発注者、元請と契約解除/民法改正中間試案

【建設通信新聞  2013年  4月 18日 記事掲載 】

 

  下請けの技能労働者の賃金水準を元請けが確保しなかった場合、発注者が元請けとの契約を解除できる制度が具体化する可能性が出てきた。法務省が16日、パブリックコメントを公表した「民法(債権関係)の改正に関する中間試案」で、民法537条「第三者のためにする契約」に解除権を新たに盛り込んだことが理由だ。自治体が導入する「公契約条例」は民法537条を根拠に制度化されており、中間試案どおり民法が改正されれば、条例を導入した自治体が、労働者の賃金水準が低いことを理由に元請けとの契約を解除できるようになる。建設業界にとって、民法改正動向が新たな関心事になるのは確実だ。


  民法537条の「第三者のためにする契約」とは、契約の当事者の一方(公契約条例では元請け、法律用語で諾約者)が、第三者(下請けの技能労働者、受益者)に対し給付(一定水準の賃金)を約束した場合、技能労働者は元請けに直接賃金の支払いを請求することができるもの。


  今回の中間試案では、537条の条文をより分かりやすくしたほか、「契約の相手方(発注者、要約者)は元請けに対し、技能労働者の賃金支払い請求をすることができる」条文を新たに明記した。


  さらに、538条では「要約者(発注者)による解除権の行使」として、「諾約者(元請け)が受益者(技能労働者)に対する債務を履行しない場合には、要約者(発注者)は、受益者(技能労働者)の承諾を得て、契約を解除することができる」と解除権を明確に規定した。


  地方自治体発注の工事や委託業務に従事する労働者の最低賃金を決める「公契約条例」は、自治体発注者と元請けが交わす契約の中に、下請けの労働者の賃金水準に元請けが責任を持つことを決めているが、その根拠として、「第三者(下請けの労働者)のためにする契約」規定がある。このため今回の改正は、公契約条例の効力を一層強める可能性が出てきた。


  これまで、日本労働組合総連合(連合)や、全国建設労働組合総連合(全建総連)は、国が公共工事や業務に従事する労働者の最低賃金を決める「公契約法」制定を最終目標に活動を進めてきた。


  ただ国は、既に最低賃金法(最賃法)があり、二重規則になることなどを理由に、公共調達に限定して公権力で賃金を規制する「公契約法」には否定的だった。


  そのため自治体は、独自に最低賃金を義務付ける公権力規制を公契約条例として導入すれば、「契約自由の侵害など憲法違反」「条例で最低賃金を決めることができない最賃法」「最小経費で最大効果の原則を規定する地方自治法」などで違法と判断される可能性を踏まえ、民法の「第三者のためにする契約」の考え方を持ち込んで、公契約条例を正当化していた。


  今回、「第三者のためにする契約」で第三者の権利を確保するための改正試案が、社会政策として導入した公契約条例に基づく、技能労働者の賃金確保に結び付く可能性が出てきた。


  法務省は、6月17日を期限とした今回の中間試案パブリックコメントを経て、国内契約法の最上位法で、明治時代から100年以上にわたり大幅な改正をしなかった「民法」の改正法案づくりに着手する予定。


  既に昨年、両論併記の形で公表した中間論点に対しては、日本建設業連合会が、「635条(瑕疵を理由とする解除)」「638条(土地工作物の瑕疵についての請負人の担保責任の存続期間)」削除について、請負者にとって過大の負担や、社会的・経済的損失の大きさを理由に反対意見を提出していた。今回の中間試案では、その意見が反映されず、2つの条文の削除を明記している。

 
 
 
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