【建設工業新聞 1月 27日 記事掲載】
公共事業の入札で、予定価格を事前に公表している自治体では落札者をくじ引きで決める「くじ引き発生率」が、予定価格を事後公表または非公表の自治体の4倍以上に及ぶことが、国土交通省の調べで明らかになった。特に、一般競争入札の導入が進む都道府県と政令市ではくじ引き発生率が高く、一般競争入札で予定価格が事前公表されると、くじ引きに至る傾向が強くなるという。国交省は、以前から適正な競争を阻害するとして自治体に予定価格の事前公表をやめるよう要請してきたが、今回、くじ引き発生率との因果関係が具体的に裏付けられたことから、さらに働きかけを強める方針だ。
国交省は、各自治体の08年9月時点での予定価格公表時期を調査し、くじ引き発生率のデータと比較分析した。それによると、予定価格を事後公表または非公表としていた自治体でのくじ引き発生率(件数ベース)は1・27%だったのに対し、事前公表していた自治体でのくじ引き発生率は5・26%(事前公表と事後公表の併用自治体は除く)と4倍を超えた。
事前公表を採用していた自治体の内訳を見ると、市区町村のくじ引き発生率は5・10%だったが、都道府県と政令市はそれぞれ7・08%、11・99%と高かった。要因を示す明確なデータはないが、都道府県・政令市は一般競争入札の導入率が高く、同省は「一般競争入札と事前公表が組み合わされると、くじ引き発生率は高くなると予想される」(総合政策局建設業課)としている。
予定価格が事前公表されると、建設業者は積算をしなくても最低制限価格を類推できる。応札額が最低制限価格に張り付いた建設業者の中からくじ引きで落札者を決める自治体も多く、建設業者の見積もり努力を損ない、適正な競争を阻害するとして、国交省は08年9月と12月にも自治体に事前公表を取りやめるよう要請してきた。国交省によると、事後公表への移行は都道府県を中心に進みつつあるという。08年12月時点で事後公表だけ採用していた都道府県は、北海道、群馬、神奈川、新潟、長野、静岡、兵庫、岡山、長崎の9団体を数えた。事前公表と併用している都道府県も11団体あり、事前公表だけという都道府県は前年に比べ9団体減少した。
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