|
経営状況分析(Y)評価基準の全面的な見直しについて
- 現行経審の経営状況分析(Y)は、平成10年当時に相次いで発生した建設業者の経営破綻等を背景に、不良債権や有利子負債過多等を勘案した内容が評点に反映されるように設計されましたが、小規模・零細企業において評点分布の幅が非常に大きく、「企業の実態に比べ過大な評価がなされ実態と乖離しているのではないか」また、「評価の内容が固定資産に関連したものに偏っており、結果として固定資産
が少ないいわゆるペーパーカンパニーが高い評点を得る傾向にあるのではないか」といった指摘がなされてきたことにより、今回、全面的な見直しをすることになりました。
|
改正経営状況分析(Y)の新指標の指標数は、
改正前の12指標から8指標に変更されました。
- 負債抵抗力指標として
1) 純支払利息比率=(支払利息−受取利息配当金)/売上高×100
(寄与度:29.9%、上限:-0.3、下限:5.1)
2) 負債回転期間=(流動負債+固定負債)/(売上高÷12)
(寄与度:11.4%、上限:0.9、下限:18.0)
※この各指標については、値が小さいほど評点に対してプラスの影響を及ぼす数値。純支払利息比率の上限を-0.3、負債回転期間の上限を0.9としています。
- 収益性・効率性指標として
3) 総資本売上総利益率=売上総利益/総資本(*2期平均を取る)×100
(寄与度:21.4%、上限:63.6、下限:6.5)
4) 売上高経常利益率=経常利益/売上高×100
(寄与度:5.7%、上限:5.1、下限:-8.5)
- 財務健全指標として
5) 自己資本対固定資産比率=自己資本/固定資産×100(*固定比率の逆数)
(寄与度:6.8%、上限:350.0、下限:-76.5)
6) 自己資本比率=自己資本/総資本×100
(寄与度:14.6%、上限:68.5、下限:-68.6)
- 絶対的力量指標として
7) 営業キャッシュフロー(絶対値)=営業キャッシュフロー(※2期平均を取る)/1億
(寄与度:5.7%、上限:15.0、下限:-10.0)
8) 利益剰余金(絶対値)=利益剰余金/1億
(寄与度:4.4%、上限:100.0、下限:-3.0)
−注−
・営業キャッシュフロー=経常利益+減価償却費±引当金増減額−法人税住民税及び事業税±売掛債権増減額±仕入債務増減額±棚卸資産増減額±未成工事受入金増減額
・総資本売上総利益率については、2期平均の総資本が3千万円以下の場合は3千万円と読み替えて計算する。
現行経営状況からの引き継ぎ指標は、「純支払利息比率」「自己資本対固定資産比率」「自己資本比率」の3指標のみです。
[寄与度に関して]
- 経営状況(Y評点)への寄与度が最も高い指標は、純支払利息率の29.9%です。
現行経審から引続き採用される指標ですが、現在の寄与度が11.3%ですから重要視していることが分ります。
同時に、上限値・下限値も0.0〜3.1%が-0.3〜5.1%と幅が広がり、それだけ格差も広がるということです。
- 次に寄与度が高い指標は、総資本売上総利益率の21.4%です。
上限値・下限値が63.6〜6.5%と範囲が広く、格差のつきやすい指標といえます。
また、今までにない売上総利益(いわゆる粗利益)を評価することにより、本業での採算を重視したものといえます。
なお、今回の収益性指標では「営業利益」に関する指標はなくなりましたが、一方で、規模評価とされるX2の評価項目において、営業利益を起点とするEBITDA(イービットディエー)が採用されていますので、留意する必要があります。
- 3番目の指標は、自己資本比率で寄与度は14.6%です。
この指標も引続き採用された指標で寄与度か8.9%から14.6%へと変わり、上限値・下限値が68.4〜−23.5%から68.5〜−68.6%と変わります。
寄与度の増加と下限値が大きく下がったことに注目しなければなりません。
自己資本比率が低い企業に対しての評価が厳しくなります。
- 4番目の指標として負債回転期間で寄与度は11.4%です。
現行経審で採用されていた有利子負債月商倍率はなくなりました。
この有利子負債月商倍率は現行経審の寄与度で最も高いことを考えれば、有利子負債に対しての評価は緩和されたわけですが、有利子負債に関連する純支払利息率と負債回転期間の寄与度を合わせると41.3%になり、依然として大きな影響を与えることは間違いありません。
- 自己資本対固定資産比率の寄与度は6.8%です。
この指標も現行経審から引続き採用された指標です。
現行の寄与度は3.5%ですが、固定資産を含めた指標がその他に長期固定適合比率、付加価値対固定資産比率を含めその合計が17.8%です。
この2つの指標はなくなりますので、固定資産に関する評価は緩和されることになります。
- 売上高経常利益率の寄与度は5.7%です。
現行の経審では、営業利益、経常利益、キャッシャフローという順に利益率を評価していましたが、今回の改正では総利益、経常利益、営業キャッシュフローという評価順になります。
また、総資本売上総利益率と合わせて収益性・効率制の指標として評価され寄与度を合計すると26.1%となり負債抵抗力に続く評価となりますので、今までどおり利益重視の経営が問われることになります。
今回の改正で注目されるのは、絶対的力量として営業キャッシュフロー(絶対額)、利益剰余金(絶対額)の指標が採用されたことです。
それぞれ寄与度は5.7%と4.4%で他の指標と比較して大きいものではありませんが、比率ではなく絶対額(規模)で評価されることに注目しなければなりません。
いわゆる過去から蓄積されてきた留保金の大きさとキャッシュフローの大きさを重視したことです。
比率の指標では、ペーパーカンパニーや規模の非常に小さい企業では、少しの改善で財務に関する企業評価が実力以上に評価されてしまう恐れがあります。
これらの指標によりその是正を行ったものと注目することができます。
現行経審で完成工事未収入金が多いとマイナス評価されてしまいますが、改正経審では完成工事未収入金の多寡を評価する指標はありません。
したがって、公共工事に関する債権は確実に回収されるにもかかわらず評点上はマイナス評価されていた点について改善されたといえます。
[注]寄与度とは、「経営状況Yの変動に対して、各指標がどれだけ影響(寄与)しているか」を表す指標
|
|
|
|